働く人に知ってもらいたいONSの目指す「いい会社」
地球環境保全こそが人類共通の重要な課題です。
こうしたなか、現代社会にとって真に求められる企業のあるべき姿を探るべく、投資のプロフェッショナル、環境コンサルタント、ドクターによるディスカッションが行われました。
ディスカッション参加者プロフィール
eumo 代表 鎌倉投信(株) 創業者
新井 和宏(あらい・かずひろ)東京理科大学卒 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)などで多岐にわたる運用業務に従事。
2008年11月、鎌倉投信(株)を創業。送信信託「結い2101」の運用責任者として活躍。
2018年9月鎌倉投信の機能を補完する新会社(株)eumoを設立。
株式会社トビムシ 代表
竹本 吉輝(たけもと・よしてる)外資系会計事務所、外資系シンクタンク、環境コンサルティング会社の設立等を経て、2009年株式会社トビムシを設立、代表に就任(現任)。2012年5月~2023年8月にかけて大阪鉛錫精錬所の取締役を務める。
全国各地で地域の自立に資するよう、地域資源をトータルにデザインしている。
専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの多面的展開にも実績多数。立法(規制)起業(市場)双方の現場を知る。
大阪鉛錫精錬所 役員
廣末 幸子(ひろすえ・さちこ)環境を考慮せずに人の健康は無いと考え、バイオテクノロジーの在り方をOpen Science DIY活動を通して探求。並行してアートとサイエンスの融合をテーマにグローバルな活動をすすめる。
生体工学・化学工学を基礎に(BS The Johns Hopkins University, Sc.D. MIT/Harvard HST MEMP)、バイオマテリアルを使い、遺伝子治療(Mount Sinai School of Medicine)、ワクチン開発(EPFL、スイス)を研究。2020年6月から大阪鉛錫精錬所社長。
数字だけでは表せない「いい会社」vs「良い会社」
竹本 目まぐるしく変化する社会情勢の中で、企業経営者が今後進むべき針路を見失い、これまで大切に守ってきた理念さえも揺らいでいる企業が少なくないようです。こうしたなか、新井様が創業なさった鎌倉投信株式会社では、投資する価値のある会社について、独自の見解をお持ちとのことですが…。
新井 私たちは「これからの日本で本当に必要とされる会社こそ、投資に値する」と考えています。それがどういった会社かと言えば「いい会社」ということです。具体的には、その企業の従業員の家族、あるいは近隣住人から「いい会社だねえ」としみじみと言われる会社を指しています。
世間一般では企業規模の大小や上場非上場を判断基準に「良い会社」かどうかを判断しがちですが、ここで言う「いい会社」と「良い会社」はまったく違うものです。
廣末 なるほど、社内外の人々からやさしい口調で語られ、穏やかな表情が見てとれるのが「いい会社」であり、データや数字から判断されるのが「良い会社」という認識ですね。
経営計画においては、企業理念に基づいて構え、長期スパンで考えているのが前者、つねに利益を追って方針変更を繰り返すのが後者にあたるのではないでしょうか。「いい会社」であるには、株価の短期的な上下に一喜一憂しないこと、株主の意見に振り回されないことも大切なのかもしれませんね。
私は株式会社大阪鉛錫精錬所(以下、ONSと略)の取締役に着任してまだ日が浅いのですが、従業員からは「問題を発見して解決しよう」「本当に変えるべき点は変えていこう」という意気込みがひしひしと感じられます。それは私自身が交流を深めてきたアメリカやスイスをはじめとする世界中のイノベーターに勝るとも劣りません。
新井 ONSは、竹本様のようなソーシャルベンチャーの社長を取締役に抜擢している(※) ことも高く評価されていいと思います。企業経営においてあらゆる可能性を模索するには、100年以上の歴史を持つ同社の経営ノウハウを生かすことも大切ですが、成り立ちの異なるベンチャーの意見に耳を傾けることも重要です。
また、こうした点からもONSは当社の考える「いい会社」の条件を十分にクリアしており、多くの企業が見習うべきだと考えています。
(※) 2012年5月~2023年8月。2023年8月31日付で大阪鉛錫精錬所 取締役退任。
社会への責任は「いい」仕事をすること。
新井 大阪鉛錫精錬所という社名を聞いた方は、どうしても「鉛」や「錫」の持つ負のイメージにとらわれてしまいがちです。
ところが実態は、まったく違いますよね。環境の保全どころか改善に貢献していると言っても過言ではないエコロジー企業です。
廣末 鉛はさまざまな工業用品に用いられる利便性の高い素材である反面、実際に有害物質としての性質も備えており、なんとなく怖い印象を持たれている方が少なくないようです。だからこそONSは、鉛を使い捨てではなくきちんと回収し、環境に負担のかからない技術を用いてリサイクルすべきだと考えています。
それに鉛は地球の地下資源であり、埋蔵量には限りがあります。いつまでも採掘し続けることはできません。すでに街中へ出ている製品の中から限りある資源を取り出していくurban miningというカタチをとるべきなのは明らかです。
ONSでは100年あまりも前から鉛の、そして近年では超硬の循環に関わっており、エコロジー関連では常にリーディングカンパニーを目指しています。
竹本 鉛はきちんとした処置さえ行えば、危険性は大幅に緩和されます。しかもONSでは、製造(精錬)のプロセスにおいて粉塵が出ないよう万全の管理体制が整えられています。
その上で、万が一の場合に備え、従業員には鉛血中濃度のチェックを含む健康診断を行うなど、健康状態のモニタリングを実施しています。
廣末 私自身はONSと信念を共有できる人と一緒に成長していきたいと望んでいます。歴史のある企業は「伝統を守ってきた」と表現されることが多いのですが、時代の流れの中で変化を続けてきたからこそ生き残り、伝統を築いてきたのです。
企業が利益を追求するだけでなく、社会に与える影響についても責任を果たさなければいけない時代、私はONSこそ先駆者的な存在であり、実践を通じて手本を示すべきだと考えています。
企業に対するエコロジーとリサイクルへの要望がますます高まる中、「ONSが課せられた使命」と「ONSだからこその可能性」について、私たちと共に考え、目的達成に向けてプロジェクト化し、着実に実践していこうという意識の高い方々と一緒に取り組んでいきたいですね。そうした行動から企業の意識とあるべき姿が見いだせるのではないかと考えています。